世界中で持続可能な開発が重視されるのに伴い、製品の信頼性もますます重要になっています。信頼性の高い製品は、消費者の体験やブランドへの信頼を高めるだけでなく、資源の無駄を減らし、環境負荷を低減します。製品の信頼性を高めるため、Moxaでは信頼性・故障解析ラボを設立し、科学・工学的手法を用いて故障の原因を究明し、製品寿命を延ばすための予防策を講じています。同ラボの設立によって、外部に検査を委託した場合に比べ、待ち時間や分析コストを抑えられただけでなく、顧客のニーズに迅速に対応することが可能になりました。また、信頼性のコア技術を確立し、設計・製造プロセスを最適化することで、製品の故障による環境への影響をさらに低減し、顧客の信頼とパートナーシップが強化されています。
信頼性・故障解析ラボの設立
Moxaは、2022年3月に信頼性・故障解析ラボを開設し、信頼性・故障解析関連分野(電気信号、材料、統計など)の専門人材を順次募集・育成して、製品の信頼性・故障解析を行っています。また、先進的な解析装置や解析ツールを購入し、非破壊解析および破壊解析の技術と能力(電子信号、部品構造、材料のミクロ構造、熱分析、信頼性試験など)を確立し、科学・工学的手法で製品故障の原因やメカニズムを解析して、顧客に正しい予防策を提案し、ソリューションを提供しています。
信頼性・故障解析ラボの進化
信頼性・故障解析ラボの分析能力は日々向上しています。同ラボは開設以来、着実に部品解析技術を向上させ、今では、故障の原因やメカニズムを正確に診断し、さまざまな事例に応じた具体的な改善プランを提供できるようになりました。
注目事例:過酷な環境下で発生した5G通信機器の故障の解析と研究
5G通信機器を交通・輸送システムで使用中、部品の断線による通信切断が発生しました。ラボで詳細な科学的・専門的故障解析を行った結果、重工業や腐食性ガス濃度の高い環境(温泉地など)でこの製品を使用すると、空気中に含まれる高濃度の二酸化硫黄や硫化水素などの腐食性有害ガスと、製品内の抵抗器やインダクタといった部品に使われている銀電極やコイルが化学反応を起こし、最終的に切れて断線に至ることが判明しました。
Moxaは、解析結果に基づき、顧客に具体的かつ有効な予防策を提案し、改善策を提供しました。まず、製品の回路基板と部品の表面に保護コーティングを施すことで、外部の腐食性有害ガスとの接触を効果的に遮断し、化学反応による部品の損傷を防止しました。また、使用環境に応じて、より耐食性の高い材料を選択することにより、製品の信頼性をさらに向上させました。これらの対策は、高濃度汚染環境下での製品寿命を効果的に延ばし、故障リスクを低減しただけでなく、顧客の潜在的な保守費用や更新費用も抑えられ、製品の競争力の全面的な向上にもつながりました。さらにMoxaは、故障解析を通じてデータや経験を蓄積し、製品設計と材料選択の能力を継続的に向上させ、今後の製品開発のための基礎を築きました。
この事例でMoxaは、ラボにおける包括的かつ専門的な解析と故障原因の正確な診断をもとに、有効な改善策および技術サポートを顧客に提供したことにより、顧客からの信頼を高め、長期的なパートナーシップを築くことができました。この製品の販売代理店がGlobal Distributor Summit (GDS) 2023の折にラボを訪問され、この事例における解析結果と改善策への高い評価と、ラボチームに対する感謝のお言葉をいただきました。
信頼性の影響力の拡大
信頼性の重要性を伝え、応用を促進するため、ラボでは信頼性の影響力を拡大するためのさまざまな普及活動に積極的に取り組んでいます。例えば、2024年には技術および故障解析の効率を向上させる「専門計器トレーニングコース」を新たに開催し、延べ22名がコースを修了しました。また、Moxaでは2024年に顧客見学会を18回、部門横断見学会を4回開催し、さまざまな部門の従業員と顧客100人以上の参加を得て、コア・コンピタンスと応用の成果を伝えました。さらに、四半期ごとに『信頼性科学ジャーナル(Reliability Scientific Periodical)』を発行し、故障事例を詳細に解析するとともに、製品の信頼性の重要性を訴えています。


今後の展望
信頼性・故障解析ラボは、今後も専門性と科学・工学を基礎として、コアとなる信頼性技術を確立し、実験と解析を通じて経験を蓄積するとともに、分野を超えた連携を進めることで、次世代製品の設計・製造プロセスを改善していきます。これにより、製品の信頼性を向上させると同時に、製品の故障が環境に与える影響を低減することで、製品の信頼性の確保に尽力していきます。