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実証されたTSNのメリットを現実世界で活用する

Theo Lai     2022年12月23日
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TSN(Time-Sensitive Networking)は、学術雑誌上での議論という段階を経て、近年では現実世界で実用化できるレベルまで飛躍しました。企業がこの魅力的なテクノロジーのメリットを享受するためには、業界関係者のニーズを理解し、TSN対応システムを構築する必要があります。Moxaは、IEEE TSNタスクグループの結成以前からIndustry 4.0とも呼ばれる製造分野におけるデジタル化、産業オートメーションに必要なあらゆるキーテクノロジーを推進するため業界のパートナーと協力してきました。TSNは、Moxaが重要な貢献をしてきた産業用デジタル化アプリケーションにおける極めて重要な成功要因です。Moxaは多くの業界関係者と連携することでTSN対応システムを構築し、複数の技術的進歩や現実世界で活用できるアプリケーションを通じ、TSNの実証済みのメリットを工場などの製造現場に提供しています。

従来の産業オートメーションアプリケーションでは、さまざまな種類のデバイス、インターフェース、プロトコルが存在することが、大量のデータをタイムリーに送信、受信、処理する際の大きな課題でした。TSNは、ネットワーク上で時刻同期を有効にすることでこれらの課題を克服し、すべての接続デバイスが共通の時刻基準を共有することで、特定のタスクに必要なすべてのデータを特定のタイミングで使用することを可能とします。これらのTSN対応システムは、時間確定的なネットワーク環境でシステムに内蔵された低遅延により、パフォーマンスとセキュリティが最適化できるため、高い信頼性を有しています。

目次

技術的成果
テクノロジーをさらに進化させる
TSNがどのように役立つのか
無限の可能性
TSN導入に向けた準備
まとめ

 

技術的成果

Moxaは技術的な観点からNXP社と提携し、主要なTSN冗長プロトコルである802.1 CBの高い信頼性を証明しました。また、Intel社やKeysight社と協力することで無線TSNネットワークの将来的な実現可能性を実証しました。

実証されたネットワーク冗長性

IEEE 802.1CB Frame Replication and Elimination for Reliability(FRER)は、複数の切り離されたパスを介して各フレームを複製送信することで、高いレベルの信頼性を実現します。そのため、部分的なネットワーク障害が発生した場合でも、プロアクティブな冗長性によってシームレスな通信が可能になります。Taipei Automation 2022の開催期間中、Moxaはオランダの半導体設計および製造会社であるNXP Semiconductors N.V. およびドイツのport Industrial Automation GmbHと共同で、Moxaスイッチを使用してNXP社の機器を接続する802.1 CBベースのリングトポロジの信頼性を検証しました。エンジニアが特定のネットワークケーブルを抜くことで、ネットワーク障害をシュミレーションし観察したところ、重要な機器を制御するデータパケットの同期が乱れることなく、正常に動作し続けることが確認できました。さらに、この検証で堅牢なネットワークの冗長性が単一の障害だけでなく、複数の障害からの復旧にも役立つことが実証されました。

Wireless Possibilities Unleashed

産業オートメーションにTSNを実装するためのもう1つの重要なステップは、無線アプリケーションによるデータの確実な送信です。多くの産業用機器がモバイル型であるため、広範なTSN無線アプリケーションが無ければ真のIIoTを実現することはできません。

Taipei Automation 2021において、Moxa、Intel Corporation、port Industrial Automation GmbHは、業界初の実用可能な、データを瞬時に送信するために必要なアプリケーション間のTSN ソリューションのプラットフォームを開発しました。この新しいプラットフォームは、さまざまな通信プロトコルとの互換性を考慮し設計されており、柔軟性と拡張性に優れています。つまり、この新しいプラットフォームは、次世代のスマートマニュファクチャリングおよびロジスティクスソリューションの構築、そして、モバイルデバイスが望ましいユースケースだけでなく、必須であるケースに使用することができます。無線TSNは、真に統合された高性能ネットワークインフラにより、あらゆる種類のトラフィックを共存させることで、TSNの可能性を最大限に引き出します。

テクノロジーをさらに進化させる

Moxaは、テクノロジーが機能することを証明するだけでなく、企業が具体的なビジネス上のメリットを享受するために、実際にいくつかのアプリケーションにTSNを実装しています。

ウェハ製造における総所有コストを削減

MoxaはELS System Technology(台湾の大手リソグラフィソリューションプロバイダー)と協力し、TSNをウェハ製造プロセスへ統合することに成功しました。ウェハのミスアライメント補正システムにマシンビジョンが組み込まれていることが、このシステムの特筆すべき点です。このTSNテクノロジーは、高帯域幅ビデオアプリケーションと高信頼性のオンデマンドモーション制御CC-Link IE TSNの統合に成功しました。このソリューションにより、ミスアライメント補正システムに必要となるマシンビジョンを完備し、安定したモーション制御システムが実現しました。
また、MoxaのTSNソリューションは、各種要件を有するさまざまなタイプのトラフィックをサポートし、オープンで標準的なネットワークを使用してネットワークトラフィックの正確なモーション制御データをリアルタイムで提供することができます。そして、TSNソリューションにより、ネットワークの経済的な実現可能性が高まります。インフラの保守、拡張が容易なため、総所有コストの削減にも貢献します。

ビデオコンポーネントのロギングによるダウンタイムの最小化

リアルタイムのビデオ監視は、データと帯域幅を大量に消費します。TSNの非常に高い信頼性と低遅延により、ネットワークを介したライブビデオの録画、ストリーミングに必要な統合アプリケーション構築が実行可能なタスクになります。日本の大手総合電機メーカーである三菱電機が目視検査中のあらゆるシステムコンポーネントのロギング改善を支援するために、Moxaはビデオストリーム、波形、および関連情報を記録する機能を備えたモジュールを構築し、ユーザーによる必要に応じたトラブルシューティングの迅速化を実現しました。その結果、エンジニアはさまざまなデバイス、ネットワークを確認する必要がなくなり、同期された重要なビジュアルデータが安全にアクセス、保存、保護されているTSNベースの統合システム上でフォレンジック調査を実施できるようになりました。

TSNがどのように役立つのか

TSNは時間確定的なリアルタイム通信により、さまざまな機器のシームレスな連携に必要なため、スマートファクトリーオートメーションの鍵と言えるでしょう。ネットワークの規模が拡大し、ますます複雑化している中、TSNはトラフィック管理を実装し、システムリソースに優先順位を付けて、重要なデータをスケジュールどおりに配信するため、ネットワークの信頼性と安全性が非常に高まります。TSNの機能に関する2つのユースケースにより、Moxaがシステムインテグレーター、マシンビルダー、エンドユーザーとどのように連携し、TSNが提供するメリットを向上させたかをご紹介します。

ユースケース1:機械メーカー

機械メーカーは、先進化、統合化、および高度に自動化されたマシンを求める市場の要求に応えるため、組み込みのスケーラビリティ、高速センシング、レーザーやマシン制御の複雑なアプリケーションを備えたマシンの提供を目指しています。しかし、最高のパフォーマンスには、各コンポーネントに属する異なる専用ネットワークをシームレスに統合、通信させることが必要です。また、このようなネットワークの保守はオペレーターにとって問題となる可能性があります。マシンが海外に出荷され、現地のオペレーターが十分にトレーニングされていない場合などは特に注意が必要です。

Moxaは、カメラ、センサー、マシン制御間の定時性の通信を可能にする統合TSNネットワークを開発しました。MoxaのTSN-G5008シリーズフルギガビットマネージドスイッチは、複数のI/Oをサーボドライバとマシンビジョンカメラに接続します。イーサネットの「First-In, First-Served(FIFS)」という性質のため、これまで重要なデータを同じケーブルで送信することはできませんでしたが、標準のイーサネットTSNインフラを使用したトラフィック管理によって重要なデータがネットワークリソースを共有することで、データパケットの配信が保証されるようになりました。このスイッチは、機械メーカーなどが製造ネットワーク上でTSNとの互換性を持つことで、Industry 4.0のメリットを享受できるように設計されています。

ユースケース2:マスカスタマイゼーション生産システム

優れた効率性はコストを削減し、柔軟性を向上させます。そのため、生産サイクルの短縮は企業のメリットとなります。また、企業は変化する市場に対応し、商用オフザシェルフ(COTS)製品などのマスカスタマイズされた、往々にして利益率の高い製品を提供することができます。製造業者にとって、このような優れた効率性と柔軟性は、生産、組立ライン、物流などのさまざまなシステムが統合されたネットワーク上にあり、生産や流通プロセスの変更や調整が効果的かつ迅速に実行できる場合にのみ実現されます。

製造業者はMoxaのTSN-G5004シリーズおよびTSN-G5008シリーズイーサネットスイッチを導入することで、既存の専用ネットワークを単一のTSN対応ネットワークに統合し、マスカスタマイゼーションを実現し、効率を向上することができます。最も重要なことは、製造業者が情報技術(IT)と運用技術(OT)の統合を実現し、製品の製造に必要なプロセス数を削減することです。このようにTSN対応ネットワークを介して資産を管理することで、適応型生産、マスカスタマイゼーション、および生産の最適化が可能になり、時間確定的な通信によって製造プロセス全体を効果的に制御することができます。

簡素化されたネットワークトポグラフィは、保守が容易かつコスト効率に優れるため、オペレーターのメリットとなります。また、オペレーターはプロトコルや要件が異なる多数のネットワークではなく、統一されたネットワークの保守を行うため、トレーニングを合理化することができます。ケーブル配線も簡素化できるため、保守にかかるコスト削減につながります。

詳しくはMoxaの事例集をご覧ください

無限の可能性

TSNは、産業オートメーションの世界に効率性、容易な管理、優れた費用対効果をもたらします。TSNの時間確定的な通信は、有線、無線を問わず、要求の厳しい産業用システムに必要不可欠な高い信頼性に必要です。TSNにはさまざまなデバイスに使用できる標準的な統合ネットワークが必要なため、ITとOTの統合によってノード数を減らすことで、ケーブル配線の合理化、メンテナンスの簡素化を実現することができます。マシンビルダーからシステムインテグレーター、エンドユーザーに至るまで、多くのステークホルダーがこれらのメリットを享受しています。

マシンビルダー

マシンビルダーは、TSNテクノロジーを用いた競争力の高いネットワークインフラストラクチャを利用し、ネットワークを介して送信されるモーションバスと情報を同じケーブルに集約することができます。このシンプルなアーキテクチャはノード数を減らすことで、全体的なコストとメンテナンス労力を削減します。また、パフォーマンスの観点では制御ループのサイクルタイムを短縮することで、より多くの機器を制御することが可能になります。さらに、TSNテクノロジーはギガビットネットワーク上で動作するため帯域幅が広く、将来的なアプリケーション追加にも適しています。

システムインテグレーター

統合されたTSNネットワークは、ケーブル配線とエンジニアリングの労力を削減することでネットワークと自動化アーキテクチャの簡素化を実現します。TSNであれば、あらゆる独自のネットワーク技術を1本のケーブルに集約できるため、ネットワークの計画、規模の制御や予測が可能になるため、総所有コストやメンテナンス労力の削減につながります。

エンドユーザー

さらに、TSNは既存ネットワークと互換性があるため、別の専用システムに接続する際にネットワークゲートウェイを追加する必要がありません。TSNと既存の標準ネットワーク間の互換性により、データアクセスが容易になり、エンドユーザーのリソースと労力の最適化を図ることができます。

また、TSNは既存のネットワークテクノロジーと比較して、帯域幅を多く消費する非クリティカルなアプリケーションよりも、クリティカルなパケットを優先的に処理する機能に優れているため、システム全体のダウンタイムを短縮します。

特筆すべき点として、標準的なイーサネットテクノロジーの活用によって、イーサネット用に開発された最新のサイバーセキュリティソリューションをTSNネットワークで利用できるため、絶え間なく変化するサイバーセキュリティの脅威に対する保護と適応性が向上します。

TSN導入に向けた準備

TSN対応のアプリケーションを実装する際、既存のアプリケーション要件とネットワークトポロジを十分に理解することが、最適なプロトコルを選択してスイッチとエンドデバイスを適切に構成するための前提条件となります。

Moxa's TSN switch allows data to be sent between the PLC and end devices.

PLC通信と画像キャプチャの両方が必要な例を見てみましょう。このアプリケーションでは、2種類のデータを同じホストコンピュータに送信する必要があります。結合したネットワークトポロジを使用して、ビデオストリームがポート4からポート1に送信されます。一方、コントローラがマスターサーバーに同期メッセージをポート2からポート1に送信していることがわかります。

高帯域幅のビデオストリームから制御パケットを保護するには、関連するコンポーネントとポート上に時刻同期(802.1 AS)と、1つの回線を時刻に応じて共用できる時間認識シェーパー(802.1 Qbv)を含むネットワーク上で必要なプロトコルを設定する必要があります。
制御パケットは1秒サイクルで送信され、サイクルデータが300 μs、時刻同期データが200 μs、残りの500 μsは非周期データを実行します。デバイスは、各スロットに対応するVLAN IDを割り当てて、サイクルデータが影響を受けないようにすることができます。

アプリケーションの動作を明確にした後、最後のステップとして、イーサネットスイッチとエンドデバイス上で必要な設定を行います。

まとめ

Moxaは長い間、業界のリーダーとしてTSNテクノロジーが真の可能性を発揮し、産業オートメーションにおけるデジタル変革を加速させるために尽力してきました。Moxaは、信頼できるパートナーや著名なステークホルダーと協力し、デジタルトランスフォーメーションを推進しているさまざまな顧客に対して、将来を見据えたTSNソリューションを提供しています。本稿で紹介したユースケースを通じて、こうしたMoxaの取り組みについて理解を深めていただけたら幸いです。
Moxaの専任チームは、TSNテクノロジーが大きな差別化要因となるアプリケーションの開発に協力する準備が整っています。スマートマニュファクチャリングとTSNの導入過程に関する詳細は、TSNマイクロサイトをご覧ください。

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