産業用システムへのデバイス接続やデータ転送と同時に、IPカメラや無線アクセスポイントなどの受電デバイス(PD)へ大量の電力を供給するといった困難な状況に陥っていませんか?Power over Ethernet(PoE)は、ケーブルを利用して給電機器(PSE)経由で電力を伝送する電源メカニズムで、コストと時間の節約、高い柔軟性などの利点があります。例えば、すべてのエンドポイントに電源コンセントを新たに設置する必要がないため、電気設備にかかる時間とコストを削減できます。さらに、PSEを使用すると、固定された電気ソケットに接続する必要がなくなります。必要な場所にPDを設置し、PoEスイッチなどのPSEに簡単に接続することができます。将来的に変更や拡張が必要になった場合でも、固定された電気ソケットを使用するより、PSEの位置を変更する方がはるかに簡単です。
しかし、より高解像度のIPカメラや、より多くのデバイスに接続する無線アクセスポイントに対する市場の需要が高まっており、現在主流となっている15 Wまたは30 WのPoEではもはや十分ではありません。さらに、PSEとPDとの互換性確認には時間がかかり、産業エンジニアが喜んで引き受ける作業ではありません。
この記事では、産業用システムのシステムライフサイクルを中心に、よくあるいくつかの重要な問題とその答えについて解説します。この記事を最後までお読みいただければ、PoEソリューションを活用した産業用システムの導入方法について理解を深めることができます。
購入前 – 評価
質問1:IPカメラなどの電力を大量に消費するPDに対応しているPoE規格はどれですか?
IPカメラを購入した際に、どのPoEスイッチがそのIPカメラをサポートしているのか判断が難しいと感じた経験はありませんか?産業用システムを開発する際には、将来の問題を回避するために、PSE(PoEスイッチなど)とPD(IPカメラなど)の互換性を適切に考慮することが不可欠です。
2003年にIEEE 802.3af PoE規格が導入されると、その利点はすぐに産業エンジニアたちに認められ、現場に導入されるPoEスイッチの数は着実に増加しています。しかし、デバイスが進化を続け、物体検出や光スキャンといった新しい機能による複雑化に伴い、より多くの電力が必要になりました。メーカーは、より高い電力出力をサポートする独自のプロトコルを作成することで、この動向に対応してきました。ですが一方で、PDとPSEの互換性の問題が発生するという、意図しない影響が生じることがあります。システム全体を計画する場合には、ネットワーキングデバイスを選択する上で、これらの潜在的な問題を考慮することが不可欠です。相互運用性は、電圧を検出し、電力容量を測定できる各種ツールによってテストできます。IEEE 802.3 at/af/bt規格に準拠するPDとPSEを選択するか、Sifosなどのツールやソフトウェアによってデバイスをテストし、デバイスを現場に導入する前に互換性を確認することを推奨します。
質問2:十分な帯域幅があるかどうかを判断する最善の方法は何ですか?
ネットワークは稼働しているのにデータパケットが遅延しているため、IPカメラからの映像が適切に送信されない、という状況を経験したことがありませんか?産業用途では、高品質のスナップショットやビデオストリームをリアルタイムでコントロールセンターに送信する必要があるため、必要な帯域幅が急増することがよくあります。
4KカメラやUHDカメラで撮影された高品質のビデオを、品質低下やビデオの損失なく確実に供給するには、PoEスイッチが十分な帯域幅を利用できるかどうかを確認することが不可欠です。フルギガビットポートのPoEスイッチであればこの要件を確実に満たすことができますが、非常に高価なオプションになるでしょう。理想的なソリューションの1つとして、ギガビットPoEスイッチ、もしくは2.5 GbEポートを組み合わせたPoEスイッチを利用することが考えられます。これによって、最も高価なオプションを選択することなく、ネットワークの柔軟性を向上させることができます。
購入後 – 設置
質問3:各PDの消費電力要件がわからなくても、ネットワーク上でPoEデバイスを確実にセットアップするより良い方法はありますか?
IPカメラなど受電デバイスのPoE電力消費を確認し、その規格に合わせてPoEスイッチを構成しなければならない、という状況を経験したことがありませんか?このタスクは手間がかかるため、このタスクを簡略化するための代替ソリューションを検討する必要があります。
よく起こるのが、IEEE 802.3bt 90 Wまでの出力をサポートするPoEスイッチを使用したいが、無線APやIPカメラなどの受電デバイスが15 Wから90 Wの電力を使用するというシナリオです。昨今では、技術の進歩によりこの問題を回避することができるようになりました。例えば、受電デバイスの電力消費を自動検出できるPoEスイッチです。これにより、PDのパラメータをWeb GUIに入力する必要がなくなります。自動的に消費電力を検出する機能で設定と導入を大幅に簡略化できることは、業界で広く知られています。
購入後 - メンテナンス
質問4:リモートに設置されたPDの問題を判断する最善の方法は何ですか?
顧客のIPカメラの1つが正常に機能しておらず、すぐに問題を解決しなければならない、と連絡を受けた経験がありませんか?IPカメラが数百キロ離れた場所に設置されていることはよくあることですが、資産の所有者は、問題を解決できる確信がない限り、現場にエンジニアを向かわせることをためらいます。こうした状況で求められるのは、発生している問題に関する詳細な情報です。
産業用アプリケーションは通常、遠隔地の過酷な環境に設置されています。PoEスイッチが障害のチェックを行い、リモートでPDを自動的に再起動できるのが理想です。これによって、資産の所有者は現場で何が起きているか、より詳細な情報を得ることができ、人員を派遣する必要がある場合には、適切な機器を持たせて状況を迅速に改善することができます。これを実現する最も効果的な方法の1つは、電子メール、リレー、トラップ通知を設定し、PDのステータスに関する情報が提供されるようにすることです。さらに、管理ソフトウェアを使用すると、遠隔地でデバイスに発生している可能性のある問題を容易に特定できるため、利用可能なあらゆるソフトウェア管理機能を活用することをお勧めします。これによって、デバイスが故障した理由についての洞察を得ることができ、現場に人員を派遣する前に、より多くの情報に基づいた決断を下すことができます。
質問5:ネットワークデバイスのセキュリティを強化するには、どのような手順を実行すればよいですか?
IP監視システムはクローズドループに置かれ、エアギャップを備えているので、サイバーセキュリティの脅威からは保護されている、と信じていませんか?残念ながら、これは正しくありません。実際、自社のシステムは安全だと確信していた企業のネットワークが侵害され、ビデオ映像が流出した、というニュース報道を目にしたことがあるかと思います。
堅牢で信頼性の高いネットワークを構築するには、産業用ネットワークセキュリティが必要です。現代の産業環境では、これを実現するために利用できるいくつかのオプションがあります。推奨される方法は、安全なネットワークインフラの確立に役立つセキュアな設計(secure-by-design)の構成要素を利用することです。産業用ネットワークセキュリティを大幅に強化する、HTTPS/SSL、SSH、RADIUS、TACACS+などのセキュリティ機能を搭載したPoEスイッチを選択してください。さらに、適切な脆弱性管理プロセスを持っているベンダーと連携することを強くお勧めします。脆弱性が報告された場合でも、提携するベンダーから適切な緩和策とアドバイスが得られ、導入期間全体にわたってシステムを安全に保つことができます。
IP監視のイノベータ企業がサービスを強化した方法
「お客様から寄せられるごく一般的な課題として、他のネットワークデバイス用PoE++インジェクタからのイーサネットポート接続の不足、データ管理用のレイヤー2ネットワーク管理機能がないこと、リモートPoE++カメラのパフォーマンスが可視化されていないこと、高度な診断に利用可能なツールがないことなどがあります。多くの場合、お客様はエンジニアを現場に派遣してリモートサイトでトラブルシューティングを行ったり、カメラを物理的にリセットしたりしなければなりません。」と、世界的なビデオ監視システムのイノベータであるWireless Technology, Inc.(WTI)で営業部長を務めるLester Miyasaki氏は述べています。さらに、次のようにも述べています。「MoxaのPoE++をサポートする12ポートのレイヤー2マネージドスイッチ EDS-G4012-8P-4QGSFP-LVA-T には非常に感銘を受けました。まず、そのスイッチがカメラに接続されると、自動検出機能がPoE++カメラのタイプとクラスをスイッチのWeb GUIに報告します。次に、直感的で使いやすいWeb GUIにより、電力バジェットや消費電力を含むPoE++設定を管理でき、必要に応じてデータをエクスポートしてさらに分析することもできます。さらに、PoE++ポートパワーリサイクルという非常に便利な機能も搭載されているため、お客様はリモートサイトに人員を派遣する頻度を減らすことで、生産性を向上させることができます。」
結論
産業界は絶えず変化しており、ネットワークに対する顧客の要望は高まっているため、顧客の要求に応えることのできる検証済みで実績のあるソリューションこそが、今後も常に最適なオプションとなります。MoxaのEDS-4008、EDS-4012、EDS-G4012の各イーサネットスイッチには、最大8つのIEEE 802.3bt PoEポートを備え、ポートあたり最大90 Wの出力をサポートするモデルがあります。互換性に関しても、MoxaのEDS-4000/G4000シリーズのPoEスイッチは、すべてのPSEポートがIEEE 802.3at規格、IEEE 802.3bt規格、および安全性と相互運用性に関する業界標準要件を満たしていることを保証するSifos PoEテストに合格しています。ファストイーサネット、ギガビット、2.5GbEなど、さまざまなポートの組み合わせに対応するMoxaの包括的な製品ポートフォリオは、産業用ネットワークの柔軟な導入に貢献します。最後に、EDS-4000/G4000シリーズには自動PoE検出機能と障害チェック機能が備わっており、システムの迅速なセットアップと維持に役立ちます。詳細については、ネットワーキングが進化したイーサネットスイッチについて紹介しているMoxaのマイクロサイトにアクセスしてご確認ください。