先進技術の恩恵を受け、膨大な数の地域にわたる交通システムのリアルタイム遠隔監視が実現したことで、私たちはスマート交通の時代を迎えようとしています。しかしながら、沿道や駅に設置された多くのレガシーデバイスは、今なおシリアル通信を使用しています。このため、沿道からコントロールセンターまで遠隔監視が可能なアプリケーションを実現するシリアルツーイーサネットソリューションに加え、大規模アプリケーションで長距離通信や複雑な通信要件などの課題を解消できる優れたシリアルツーイーサネット通信技術が必要となっています。MoxaのNPortシリアルデバイスサーバーは、さまざまな動作モードに対応しているため、TCP/IPネットワーク経由によるシリアルデータの送受信が容易な、使い勝手のよいシリアルツーイーサネットソリューションです。本稿では、さまざまなアプリケーションシナリオにおける通信の課題と併せ、MoxaのNPortシリアルデバイスサーバーに搭載されたTCP/UDP動作モードによるスマート交通アプリケーション向けシリアルツーイーサネット通信を最適化する方法についてご説明します。
シナリオ1:道路交通監視
沿道に設置されたさまざまなコントローラとセンサーは、交通や環境状況に関するデータを収集します。遠隔地に配置されたこれらのフィールドデバイスは、交通管制センターと通信しオペレータにリアルタイムの道路状況を提供します。オペレータは、この情報を基に交通渋滞や悪天候に関するリアルタイムの情報を道路利用者に提供します。このような大規模アプリケーションでフィールドデータを収集し、それらを道路利用者に向けた有用な情報に変換する場合、オペレータは異なるアプリケーションプログラムから要求される複数のシリアルデータ要求への対処が困難であったり、事故発生時の応答時間が遅延する可能性があります。
NPortが実現できること
Command-by-command機能による伝送精度の向上
MoxaのNPortシリアルデバイスサーバーは、遠隔監視アプリケーションにおいてフィールドセンサー(交通コントローラ、道路センサー、その他の種類のデバイスなど)を接続する際によく使用されるTCPサーバーモードをサポートしています。TCPクライアントプログラムを実行するコントロールセンター内の中央システムは、NPortと通信、接続を確立することでフィールドデバイスからシリアルデータを受信します。MoxaのTCP Server Modeは、複数のホストが同時にNPortに接続した際にそれぞれのホストが同じフィールドデバイスから同時にシリアルデータを収集できるMax Connection(最大接続)機能をサポートしています。この機能により複数のコマンド要求が可能となりますが、一方でデータ衝突の可能性があります。そのため、Max Connection機能を有効化した場合にシリアルデータの衝突を防ぐCommand-by-command(コマンドバイコマンド)機能が設計されました。NPortは、Command-by-command機能によりイーサネット上のいずれかのホストから受信したコマンドをバッファに保存することができます。これらのコマンドはFIFO方式(先入れ先出し)でシリアルポートに送信されます。フィールドデバイスが応答すると、NPortはその応答をバッファに保存した後、コマンドの送信元に送信します。
NPortが実現できること
TCP Alive Check Timeout機能がネットワークの復旧時間を短縮
ホストが能動的にTCP接続を確立(これに対してNPortは、クライアントの接続を受動的に待機するTCPサーバーとして機能)する場合、NPortはネットワークが切断されたかどうかを判断することができず、接続が継続していると認識し動作を続けます。ネットワーク接続が復旧しても、ソースが占有されているため、クライアントはデバイスとの接続を再確立することができません。そのため、担当者が現場を訪れNPortを再起動しリソースを解放する必要があります。これは労力と時間的コスト両方の観点から非効率的です。TCP Server Modeは、この課題を解消するため、ネットワーク切断時にNPortがフェイルセーフメカニズムを提供するTCP Alive Check Timeout(TCPアライブチェックタイムアウト)機能を備えています。この機能は、TCP/IP接続のステータスを定期的にチェックし、イーサネット接続のステータスを提供します。)
シナリオ2:アクセスコントロールシステム
駐車場システムや駅の改札など多くのインテリジェント交通システムは、アクセスコントロールシステムを導入しています。このシステムは一般的に、認証や支払い計算のためにカードリーダーを通じてシリアルデータをアクティブに収集し、TCP/IP経由で複数のシステムにデータを転送します。そのため、接続に失敗するとユーザーと運行業者が時間的および金銭的な損失を被る可能性があります。接続の信頼性を高めるには、シリアルツーイーサネットソリューションがTCP/IPネットワーク経由で正しいシリアルデータを送信し、バックアップシステムに十分な伝送帯域幅を提供する必要があります。
NPortが実現できること
データパッキング機能により、要求されたシリアルデータを提供
NPortシリアルデバイスサーバーは、アクセスコントロールシステムを用いてシリアルカードリーダーなどのデバイスを接続する際、一般的に使用されるTCPクライアントモードをサポートしています。このシナリオでは、データはホストアプリケーションプログラムに送り返され、処理されます。TCP/IPネットワーク経由のシリアルデータ伝送の課題として、データが別々のイーサネットパケットに分断され、アプリケーションプログラムが失敗する可能性があります。MoxaのNPortシリアルデバイスサーバーは、シリアルデータが完全かつ認識可能なパケットとして送信され、アプリケーションが要求を適切に受信・処理できるようにするData Packing(データパッキング)機能を備えています。アプリケーションプログラムは、特定の文字をデータストリームの終端として認識し、NPortが特定の文字をシリアルポートで受信すると、データパッキング機能であるDelimiter(デリミタ)機能により、バッファ内のすべてのデータを即座にパッキングしてイーサネットに送信します。こうして、支払いシステムは要求に応じてシリアルデータを受信することができます。
NPortが実現できること
接続制御機能による接続効率の向上
NPortは、TCPクライアントモードに設定することでConnection Control(接続制御)機能を有効化し、ホストとのTCP接続を確立、切断するタイミングを決定できます。この機能は、TCP接続数を必要な数に制限するとともに、未使用の接続を自動的に切断し、ホストサーバーの効率を高めます。また、TCP接続を確立、切断するさまざまなイベントを定義することもできます。一般的な例はAny Character/Inactivity Timeout(任意の文字/非アクティブタイムアウト)です。このイベントは、シリアルデータアクティビティが発生する都度、NPortをトリガーし、ホストとTCP接続を確立します。シリアル端末が一定期間アイドル状態の場合、NPortはシリアルデータアクティビティが再開されるまでTCP接続を切断します。この状況では、Max Connection機能を使用することで伝送帯域幅を占有することなく、バックアップホストに接続しシリアルデータを収集することができます。
シナリオ3:乗客情報システム
スマート交通は、乗客情報システムを利用して通勤者にリアルタイムの交通情報を提供します。運行業者は、列車のダイヤや高速道路の道路状況などの情報を表示させるため、一連のLEDディスプレイに同じメッセージをブロードキャスト(またはマルチキャスト)する必要があります。このアプリケーションでは、通勤者がリアルタイム情報を受け取り通勤ルートを調整するため、より高速の伝送が必要です。
NPortが実現できること
UDPモードによる伝送速度の向上
リアルタイムのデータ伝送が必要なアプリケーションで、ソケットプログラムがUDPプロトコルを使用する場合、NPortをUDPモードに設定することができます。UDPモードではデータ伝送の前に接続を確立する必要がありません。それがUDPとTCPサーバー/クライアントモードの主な違いです。TCPの3ウェイハンドシェイクに必要な時間が短縮されるため、TCPサーバー/クライアントモードに比べてデータ送信が高速化されます。UDPモードは、リアルタイムのデータ伝送が必要であり、データが損失してしまうケースを許容できるアプリケーションに適しています。UDPモードでは、シリアルポートごとにマルチキャストIPアドレスを設定することができます。この場合、同じマルチキャストIPアドレスをサブスクライブするすべてのデバイスが、IPアドレスに割り当てられたメッセージを受信することができます。複数の宛先に効率的にメッセージを送信できることに加え、異なる宛先に同じデータを何度も送信しないため、貴重な帯域幅を節約できることがマルチキャストの利点です。
MoxaのNPortシリアルデバイスサーバーは、各種動作モードがさまざまな機能を提供し、産業用アプリケーションの要件を満たします。他の機能に関する詳細は、Moxaのガイドをご確認ください。さらに、MoxaのNPortシリアルデバイスサーバーは、セキュリティ機能を備えさまざまなOSドライバをサポートしているため、シリアルデバイスを最新のシステムに容易かつ安全に接続できます。Moxaのシリアル接続ソリューションが、シリアルデバイスをネットワーキングの未来に導く上でどのように貢献するかご確認ください。