バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)は、急速な成長を続け、世界中のエネルギー産業の中で、最も活気に満ちた分野へと変わりつつあります。中・大規模(10 メガワット超)のBESSは数百から数千万ドルと評価され、バッテリー単体がその価値の半分を占める場合もあります。しかし、あらゆる種類の充電式バッテリーと同様に、大規模エネルギー貯蔵システムもバッテリー劣化の影響を受けます。また、充放電サイクルの繰り返しによりバッテリー容量が減少する場合もあるため、資産としてのBESSの価値低下を招く可能性もあります。
小型家電製品であれば、3年毎のバッテリー交換は容易ですが、BESSの定期的なバッテリー交換はコスト効率が良くありません。BESSの所有者やサプライヤーは、10年間で50 メガワット時などのバッテリー性能保証を利用しています。サプライヤーは、あらかじめ予備バッテリーを搭載しておくオーバーサイジングや、既存バッテリーに新規バッテリーを追加する補強などの戦略により、保証義務を履行しています。これらの戦略を効果的に利用することで、サプライヤーはコストを最小限に抑え、所有者は利益を維持できます。しかし、そのためには高品質なデータが必要不可欠です。
データ管理:BESS長期運用の重要なポイント
所有者とサプライヤー双方の効果的な保証契約に、バッテリー性能に関するデータの収集や分析を欠かすことはできません。一般的にBESSシステムのサプライヤーは、動作温度や充電状態(SoC)に関する特定のパラメータを定めた、バッテリー使用におけるガイドラインを策定します。そして、所有者は保証請求の際にデータを証拠として提出します。バッテリー性能が低下した際に、所有者は補償や交換を請求できることがガイドラインには定められています。しかし、これはデータが充放電制御の適切な管理を証明できる場合に限られます。
こうしたデータは、BESSシステムのサプライヤーがバッテリー状態を評価する際の最も重要なツールでもあります。ビッグデータ分析による予知保全で、故障リスクを軽減することができます。また、バッテリーの健全性(SoH)が60%~65%に低下すると、バッテリーモジュールは保証対象外となるため、SoHの指標はビジネス上の意思決定に影響を与えます。つまり、契約上の義務を果たす上でデータは重要な役割をもち、BESS企業は、データの収集、保管、送信における高い信頼性を確保する必要があります。
BESSデータの保管と送信
大規模な投資の評価にデータを欠かすことはできません。しかし、あらゆるケースに対応する単一の決まったデータの保管や送信の方法はありません。大規模なBESSの所有者やサプライヤーを長くサポートしてきたMoxaの豊富な経験に基づいた、データの保管および送信に関する重要な2つのポイントをご紹介します。
- 耐障害性の高い施設:大規模なBESS施設は遠隔地や沿岸地域に設置されることが多く、塩害などの環境要因により腐食する危険があります。そのため、動作温度範囲と平均故障間隔(MTBF)が広く、現場環境に耐えることができるデバイスを選ぶことが重要です。例えば、電磁干渉への耐性が高い光ファイバや、腐食防止コーティングなどを施したデバイスです。これにより、送信データの安定性と完全性を確保できます。
- 冗長性の高いシステム:遠隔地では、不安定な電力供給や予期せぬ停電といった予測が難しい問題が起こるため、これらの問題に備えることが重要です。複数の入力電源や、デュアル電源バックアップ設計を備えた機器の選択が有効です。大規模なBESSであれば、デュアルネットワークバックアップ(LAN-A/LAN-Bネットワーク)や、接続が切れた際に迅速にバックアップがおこなわれるリング型のネットワークトポロジなど、ネットワーク冗長機能の採用を検討するとよいでしょう。ネットワークに異常が発生した際、バックアップネットワークが即座にアクティブ化されるため、データ損失を最小限に抑えることができます。また、カスタマイズされたネットワークアーキテクチャにより、各サイト固有データの安定した送信を確保することで、適切な費用対効果のバランスをとり、大きな損失を回避できます。
世界的な再生可能エネルギーへの移行が進むにつれて、電力網の安定性とエネルギー最適化を実現するBESSシステムの重要性がますます高まっています。データの集約、管理、送信に関する深い知識は、政府、投資家、サプライヤーによる多額の長期投資を促し、持続可能なエネルギーへの移行を加速することにつながります。
詳細は、BESSポータルサイトををご覧ください。